「人生の約束」を観て

先日、気になっていた「人生の約束」を観た。

個人的には、素敵な作品と思った。

ネット上では、つまらない、演出がださいとか、好印象ではない感想も多い。

だが、私は、映画として素敵な映像で、素敵な人間物語だと思った。

富山県射水市新湊の四十物町と書いて、あいものちょうと読むとのことです。

ここが、メインの舞台です。 

この町が素敵に映されています。

監督の愛情が絵になっています。

祭りと曳山にかける町民たちの思い。

そこに、主人公の中原佑馬を演じる竹野内豊さんと、役者としては出演はしていない塩谷航平さんの物語。

役者として出てこない、出演者、それぞれの心の中に塩谷航平さんはいます。

そこに、渡辺鉄平さん演じる江口洋介さんと、玄さんを演じる西田敏行さんを中心とした物語です。

かっこいいのか、それとも不器用なのか、わからない、表情を演じることができない竹野内豊さんが、ふとした時に、憂や漏らす笑顔が、かっこよさにつながっているかもしれません。

江口さんは、無骨な男、男なら、こんな感じでいたいと思うような男を、遠慮なく演じきっています。

人生を生きる上で、大切にしたいものは、ひとそれぞれ。そのとき、その状況で変わってきます。

中原佑馬は、本当に大切なものが何なのかを、四十物町の人々と、袂を分かった亡き親友との糸をたどることで、思い出します。

最後の、曳山のシーンは美しいのですが、曳きながら、中原はつながりながら、失って気がついた大切なものを思い出します。

鉄ちゃんや玄さん、そして航平さんの忘れ形見が思い出させてくれるのです。

忘れ形見は、高橋ひかるさんという新人が演じていますが、ちょっと遠慮がちで、どこにでもいそうな可愛い女の子を演じています。ちょっと、ほっとできる女子高生でしたね。この物語のキーパーソンの一人です。

この忘れ形見を見つめる竹野内さんの、優しい眼差しが、ちょっとギャップがあっていい感じでしたね。

この作品、他の出演者も、いい役者が多く出ています。

優香さん、小池栄子さん、室井滋さん、美保純さんが、男たちを引き立て、盛り上げています。

柄本明さん、松坂桃李さん、ビートたけしさん、立川志の輔さんが、脇を固めています。

竹野内さん、新湊の海に落ちた時の濡れた頭の髪のボリュームの薄い感じが、江口さんの短髪の雄々しさとの対比につながり、流れた、過ごした時間の違いを感じさせましたね。

江口さんの、短髪は、斬新な感じがしましたが、おお耳がでかい、ダンボのようだと感じたのは私だけではないかもしれませんね。あとは、ちょっと、ダイエットをして精悍さを増した顔貌と漁師の仕事着のジャージ姿もいい感じでしたね。

東京との対比で、大切なものを思い出せてくれる富山の風景が引き立てられます。

人は、富山でも、新湊でも、生きていけます。

東京でなければ生きられないというわけではなく、美しい日本が富山にもあるということを映していますね。

この美しさは、映画館のスクリーンでこそ伝わります。

祭りというもの、曳くということを共有して、ひとは一人では生きられないことを、一人ではなく、人とつながることで、人生っていいなと思える。

そんなことを、思い出させてくれる作品でした。

小さな連絡と小さな約束を大切にしたい、そんなことも思い出させてくれる作品です。

駄作だと語るネット民も多いようでしたが、私は秀作だと思います。

この作品の魅力は、おそらく映画館ならば伝わるでしょう。

新湊にも行ってみたくなりましたね。

大人の冬休みにおすすめの一本です。